化学プラントとは?仕組みと役割を初心者向けにわかりやすく解説

プラント設備

日本の産業を支える化学メーカー。

その生産工場は化学プラントと呼ばれています。

この記事では就活生や新入社員などの初学者に向けて、

  • 化学プラントにはどんな設備があるのか
  • どのように製品を作っているのか
  • どんな部署があるのか など

ざっくりとした概要を解説します。

化学プラントに配属されて間もない新人の方や、就活中の学生の方は必見です。

化学プラントは「化学的、物理的変化を利用して原料から化学品を作る工場」

化学プラントとは、化学的、物理的変化を利用して原料から化学品を作る工場のことです。

正直この一文で片付いてしまうのですが、一つ一つ紐解いていきましょう。

化学的変化と物理的変化

まずここでの化学的変化というのは、皆さんが一般的にイメージする化学反応を指しています。例えば、水素を酸素と反応させて水を作る反応【2H₂+O₂→2H₂O】が最も単純かつ一般的な反応でしょうか。

一方で物理的変化は、物質の化学的な組成変化が生じない温度や圧力の変化を指しています。固体⇄液体⇄気体の状態変化や、液体への溶解などが含まれます。

化学プラントではこの世界の基本的な原理を上手く利用して、原料を製品(化学品)に変化させているわけです。

化学プラントにおける原料と製品

じゃあその原料と製品にはどのようなものがあるの?という話になってきます。

ほんの一例ですが、化学プラントで取り扱う原料、製品として以下のようなものがあります。

原料

  • 原油
  • ナフサ
  • 天然ガス
  • エチレン
  • 水素

製品

  • ガソリンや軽油(石油精製)
  • プラスチック(ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなど)
  • 化学繊維(レーヨン、ナイロンなど)
  • 基礎化学品(苛性ソーダ、硫酸、塩酸など)
  • 界面活性剤

ここで気を付けないといけないのは、必ずしも上で挙げた化学品が原料や製品とは限らないという点です。

例えばナフサからポリ塩化ビニルを製造するプロセスでは

ナフサ→エチレン+塩素→二塩化エチレン→塩化ビニルモノマー→ポリ塩化ビニル

という流れで反応を進めていきますが、これを1つの企業、化学プラントで完結させようとすると、工程が多く運転管理が大変です。

そのためナフサ→エチレンはA社担当エチレン⁺塩素→二塩化エチレンはB社担当というようにプロセスを細分化していることもしばしば。

この場合、A社の原料はナフサ、製品はエチレン。B社の原料はエチレン塩素、製品は二塩化エチレンという事になります。

若干話が逸れた気もしますが、このように化学プラントごとに原料と製品が設定されています。


化学プラントの基本的な工程

ここからは具体的に、化学プラントではどのような現象が起こっているのかを解説していきます。

と言っても製造しているモノによってその工程も千差万別なので、これはかなり一般化された内容だと思ってください。

試しに先ほど挙げたナフサ→エチレンの例をあてはめて考えてみましょう。

化学プラントは大きく分けて、以下のような工程で構成されています。

① 原料の受け入れ

原料を調達している企業から原料を受け入れます。

ナフサの場合はパイプライン(地中に埋められた配管)で供給されることが多いです。

次の工程へ送られる前に、以下のような操作を行う場合もあります。

  • 不純物の除去
  • 温度・圧力の調整

② 化学反応

ここがプラントの中心、メインの工程になります。

反応器と呼ばれる設備に原料を送り、原料に熱や圧力、触媒などを加えて化学反応を起こし、別の物質に変換します。

ナフサ からエチレンを製造するプロセスでは、熱分解炉という設備でナフサに含まれる物質の炭素C-C結合を部分的に切り離し、エチレンやプロピレン、ベンゼンなどが含まれる混合物を生成します。

化学プラントで稼働している反応器には様々な種類があり、同じ化学反応でもいくつか反応器の種類があります。

反応器の種類によって反応条件が違ったり、反応の効率やコスト面での優劣があったりするという事を押さえておきましょう。


③ 分離 ④精製

反応後の混合物には未反応の原料や意図しない副反応による副生成物が含まれています。

そのため反応させた混合物から目的の物質を取り出す必要があるわけですね。

分離と精製という工程でやっている事は大体同じなのですが、分離工程でおおざっぱに目的物質と他の物質を分け、精製工程で目的物質の純度を高めるというイメージで大丈夫です。

目的物質の割合を%で表すと、分離で50%→95%、精製で95%→99.9%くらいでしょうか。

分離精製工程では以下のような操作が行われます。

  • 蒸留(沸点の違いで分離)
  • 吸収・抽出
  • ろ過

生成物が気体個体液体のどれに属するか、どんな化学的性質をもっているかで行う操作が決まってきます。

⑤輸送

純度の高い目的物質が得られたので、いよいよ出荷の工程となります。

手段としては原料受け入れと同様のパイプライン、陸路で輸送するタンクローリー、海路のタンカーなどがあります。

顧客と取り決めた量を安定供給する必要があります。

以上、化学プラントの一般的な製造工程でした。

化学プラントはどんなことをやっているのか、というイメージを掴んでもらえればと思います。

化学プラントを構成する主な設備

先ほど説明した工程で効率よく、安全に操業するために、化学プラントには多くの装置があります。

代表的な設備を紹介していきます。

■反応器

原料を反応させ、目的物質を得るための設備です。どんな反応を起こすかによって種類や形状が異なります。

化学プラントのメインとなる設備と言っていいでしょう。

■ ポンプ

液体を移送する装置です。気体を移送させる装置はコンプレッサーと呼ばれます。
→プラントの「血液循環」の役割で、人間でいう心臓にあたりますが、人間と違ってプラントにはポンプやコンプレッサーが無数に設置されています。

下の記事ではもう少し詳しくポンプについて解説しています。気になる方はどうぞ。


■ 熱交換器

専門外の方に馴染みのない設備ナンバーワンは、この熱交換器だと思っています。

読んで字の通り、2つの流体同士で熱を交換する装置です。

それって重要なの?と思いがちですが、プラント全体のエネルギー効率の向上には欠かせない設備となっています。

やっている事は流体の加熱or冷却に過ぎないのですが、プロセスにおいては余熱や熱回収などの重要な役割を果たしています。


■ 蒸留塔

液体混合物を沸点の違いで分離する装置です。縦長の円筒の内部には穴の開いたトレイが複数設置されています。

プロセスの工程の紹介でもあった通り、物質の精製分離は多くの化学品の製造工程において必須となっているので、蒸留塔は化学プラントの中核設備と言えるでしょう。

■ タンク

原料や製品を貯蔵する設備です。うーん、シンプルでよろしい。

貯蔵タンクは大きいほど場所を取りますが、原料が入ってこなくなるなどの有事の際に活躍してくれる保険のような設備です。

貯蔵以外にも還流用のタンククッションタンクなどもありますが、基本的にタンクの役割は貯蔵という認識で良いと思います。

■ 配管・バルブ

配管は流体の通り道であり、各設備を接続する設備です。

バルブは流体の流れを止めたり、流れる量を調節するための設備です。

これら2つは一見地味ですが、プラント全体をつなぐ重要要素となっています。

計則器

プラントの運転状況を定量的に観測するためには、圧力計温度計流量計液位計といった計測器が欠かせません。

配管に取り付けて流体の温度や圧力が問題ないか確認したり、バルブと組み合わせて配管に流れる流体の量を自動制御するといった役割があります。

この他にも紹介できていない設備がありますが、これらの設備が組み合わさってプラント全体が機能しています。

各設備について、後日別記事で解説予定ですのでお待ちください。


化学プラントの部署

化学プラントはプラントを運転する運転員(オペレーター)の他に、いくつかの部署で構成されています。

が、その部門構成は企業によって千差万別…

ここではざっくりとした部署の特徴や業務内容について押さえておきましょう。

■ 製造部

主にプラントの運転を担当する部署です。運転員(オペレーター)とその運転員を管理する役職があります。

24時間運転の化学プラントでは直というグループに分かれ、8時間や12時間単位で交代するという勤務形態が一般的です。

人員の属性としては普通高校や工業高校の卒業生がのメインの層であることが多いです。

業務内容

  • プラントの監視・操作
  • 異常時の対応 など


■ 生産技術部

理系の大学卒が化学メーカーに就職すると大多数がこの生産技術関連の部署に配属されます。

プラントの運転条件を決めたり、合理化のために新しい設備を導入したり…

イメージで言うと化学プラントの総合的な管理者という立ち位置でしょうか。

私が所属しているのはこの生産疑似述部に近い部署です。

業務内容

  • 運転条件の最適化
  • 設備改善
  • トラブル解析 など

■ 設備・保全技術部

設備にはもちろん寿命があります。

この部署ではプラント内の設備の寿命を様々な手法で測定し、できるだけ長持ちするよう整備を行っています。

業務内容

  • 設備の点検・修理
  • 故障予防

保安部

化学プラントでは人体に危害を及ぼす恐れのある危険物を取り扱っている所がほとんどです。

また、高所からの転落や回転機器への巻き込まれ、爆発など命に係わる事故のリスクも少なからずあります。

それら危険物の取扱いや、プラント内の事故防止活動を主導する部署が保安部です。

業務内容

  • 安全教育
  • 工事届け出 など

この他にも事務部や経理部などの間接部門が工場地区に設置されている化学プラントもあります。


まとめ

化学プラントとは、原料を化学的に変化させて製品を作る工場であり、

  • 原料受け入れ
  • 化学反応
  • 分離・精製
  • 出荷

という流れで成り立っています。

また、

  • 多くの設備が連携するシステムであること
  • 24時間連続運転であること

が大きな特徴です。

というわけで今回は化学プラント入門編という事で、ざっくりとした化学プラントの概要について解説しました。

今後は各設備の細かい解説記事などを投稿していく予定ですのでご期待ください。

それではご安全に!